第一話

むかしむかし。 木の葉茂る山、沢を登り崖を乗り越えまだいったその奥に、ナルトという親のない、一匹の狐がおりました。 ふさふさした尻尾は秋の稲穂のような黄金色、つんと尖った耳を持つ狐です。 その狐は親はなくともたいそう元気…

第二話

――― お い で 。 まさしく時が止まったようだった。ゆっくりと、緋の唇が動く。そうして差し伸ばされてきた白い手は、その表面のなめらかさから細らんだ爪先の丸みに至るまで、やはり全てが作り物じみた完璧さだった。危うさを感…

第三話

ぐう。組んだ手のひらの下で、腹の虫が鳴いた。ぐぅ、きゅう。言い足りないとでもいうかのように、切なげな訴えはまだ続く。長く仰向けになったまま見上げた壕の天井に、その声は甲斐なく染み込んだ。 「――…っとに、お前ら元気だなあ…

第四話

「……た、頼み?」 聞き返したナルトは、言いながらもすでにその言葉に呑まれかけているのを感じた。訊き返しに眼差しが頷くように細くなる。出会った時、彼が言おうとしていたのはこれだろうか。 「頼みって、その――なんだってばよ…

第五話

「いこう」なんて言われつつも、話はそう簡単ではないだろうなというのは予想していた。 「駄目です。飼えません」 どうやら住まいまで同じくしているらしい、先日通りすがった老紳士に後見人と説明された例の男は現れた金髪に一度はぎ…