第一話


むかしむかし。

木の葉茂る山、沢を登り崖を乗り越えまだいったその奥に、ナルトという親のない、一匹の狐がおりました。
ふさふさした尻尾は秋の稲穂のような黄金色、つんと尖った耳を持つ狐です。
その狐は親はなくともたいそう元気なオスの子狐でしたが、小さい頃から、ずっと他の狐から仲間はずれにされていました。 なぜなら金茶や榛色した群れの中、ナルトの目だけは何故か晴れた夏空みたいな、澄んだ青色だったからです。
そうして寂しく悔しい思いをしてきたものですから、ひょんな事から変化の技を覚えてからというものナルトは自分でない姿に身を変えるのが何よりの楽しみとなりました。
殊に気に入りだったのが、『人』に姿を変える事です。
黄金色の毛並みをつるりとした小麦色の肌に隠せば、賑やかで開かれた街の世界に出るのも、いとも容易いことなのでした。
最初は山の麓の里に降りていくばかりであったものが、再三人里に降りてきては人に紛れていくうちに徐々に遠くまで足を伸ばすようになり……
やがて山へは、滅多に戻る事がなくなってしまいました。

ふらりふらりと足の向くまま気の向くまま。

そうやって金の髪をした学生さんに身を変えた狐は、 行き着いた先で孤独を紛らわすように騒ぎをおこしたかと思えばごく稀に良い行いなどしつつ、また流れゆくというような暮らしをしておりました。